ゆっくりでも止まらなければけっこう進む
Posted by watari - 2012.09.29,Sat
『アメリカの竹竿職人たち』読了。【☆☆☆☆☆】
アメリカバンブーロッド工房探訪記。
序章には、『バンブーロッドは文明に疲れた現代人のための「魔法の杖」』とのこと。さまざまなビルダーが出てきますが、みなそれぞれ非常に個性的。ビルダーの人間性がとても魅力的に表現されています。
この本に書かれているようなフライ用のバンブーロッドを買おうと思ったことは、いまのところ無し。でも、作れるのならばいつかは作ってみたいなぁとは思っています。とりあえず今回は読み物として、面白そうだということで手に取ってみました。ちなみに出てきたビルダーの名前で知ってのはペインとウジニッキ、メーカーではウィンストンとトーマスアンドトーマスくらい。
読んでみて強く感じたのは、「イノベーションは道具を変化させる」ということと、「技術は人に宿る」ということ。
時代が変わると道具も変わっていきます。怖いくらいに進化の速度が増しています。
道具が、時代遅れになってしまった場合にそのメーカーは立ち行かなくなり潰れて無くなってしまうわけですが、その技術を持つ人々は、たとえ時代遅れになっても、その道具が必要とされるかぎり生き残っているわけです。
釣り竿もバンブーからグラス、そしてグラファイト。きっとグラファイトを超える次の素材がくるでしょう。イノベーションは全ての人を救う訳ではないわけで、取り残される人もいる。でも、取り残されたといっても、それは不幸ではないのだということがよくわかります。文中には「バンブーロッドは癌を治さない。マストじゃない。でも、世の中にはなくてはならない不思議なもの。」とあります。確かにそのとおり。
作っているモノは違えどもメーカーに勤めていて、そのうえハンドメイド好き、またロッドビルドをする私にとっては非常に興味深く読めました。モノを作るということは、従来技術の踏襲と、その革新とでバランスを取りながら進歩、そして進化していくわけですが、このフライロッドもそのような経過を経て進んできたのだなぁということがわかります。
趣味の道具というのは、生活の道具よりもその時代に遅れてしまっていても必要とされることがあるわけですが、必要とされるかどうか、ということはその道具そのものが持っているチカラということが大きいのだろうなぁと思いました。
ちなみに文中に出てきた具体的な値段であったのは3年待ちの3500ドルだとか。いくら円高といえども、釣り道具にその値段はかなり無理があります。ですが、工芸品として、そして道具としてのフライロッドは、結果的に歴史の浅いアメリカとしては国の宝ということになるのでしょう。
釣り人の本は面白くない、というのが私の中での定説ですが、この本は非常に面白かった。
あるビルダーが著者に対して、「釣りは禅に似ている」だって。私も実はそーいう気がしています。
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