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Posted by - 2017.12.18,Mon
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Posted by watari - 2012.09.22,Sat

『虐殺器官』読了。【☆☆☆☆☆】


 

傑作。
伊藤計劃氏の処女作。
SF作品、という括りには捉えきれない。
 
作品タイトルから伺えるような生々しいグロテスクな描写もあるが、逆にそれが物語の純粋さを引き立たせているように感じる。また、この作品のテーマ性については文句が無く、その表現も凄まじい迫力を感じさせる。ラストシーンは賛否あるかと思うが、個人的にはあれで良かったと思う。
 
細かなことを言えばいろいろとあるが、全体としてこの作品の素晴らしい、ということからすれば瑣末なことだ。SF好き、フィクションが好きだというならば、読むべき。あとがきにもあったが、これからの日本SFが変わっていく可能性を感じさせた作品。
 
アメリカ同時多発テロ「911」以後のこと。およそ2020年頃。
サラエボでテロリストのお手製核爆弾が爆発し、そのうえ核戦争が起こっているという設定であるが、これが物語のリアリティを持たせている。起こってもおかしくない世界観を醸し出していると思う。
そのうえでSFのアイテムとして生体IDが出てくる。IDを身体に埋め込むことで、電車や飛行機に乗るのも、商品を買うにも、認証をするようになった。それはテロから身を守る手段というわけだ。
 
そのなかで、世界では大規模虐殺が増加していく。その虐殺が起こったところに必ずいるというジョン・ポールという男。虐殺をコーディネイトする男。特殊部隊に所属する主人公は彼を追いかけていく。
 
作品のテーマはいくつかあると思うが、個人的に最も惹きつけられたのは「言葉の持つ力(ベクトル)」と「当事者としての事実」、そして「生物の進化と淘汰」。
 
実はこの物語読んでいる時に、シンクロすることがあった。
あえて書かないが、大きくニュースで取り上げられていた。
読んだ方や、読んでいただければ、ピンと来ると思う。
 
どこかからの言葉が争いを引き起こし、当事者たちはその自覚を持っていない。
自分で考えて行動しているつもりでいても、それはナニかの影響の下にある可能性が高い。そのことに自覚を持っているか?、いないのか?ということの差は大きいと思う。
 
我こそは自分の考えを持っているのだ。
 
と思っている人は、気が違っているか、勘違いをしている人間だろうと私は思っている。
それだけ人間は誰かの影響の元に生きていると思う。もしかすると、誰か?という具体的なことではなく、実体のない「ナニカ」なのかもしれない、とも思っている。
 
本書にもあるが、愛国心が戦争の動機になったのは、およそ100年前からだ。
そんな昔のことじゃない。それより以前は、明確な利益のためや金儲けのために専門家同士でおこなわれることが一般的であった。いわゆる今でいうところの企業がやっていたわけだ。国がしゃしゃり出てきて、世の中が狭くなってきた。
 
自分の考えが、得体の知れない「ナニカ」に左右されていないか?
それは誰にもわからないことだと思う。
「わからない」ということを当たり前だと自覚していることが大事だと思う。
 
この方の新作がもう読めないということは残念極まりない。
文庫版の大森望氏の解説も秀逸。最後に御母堂の言葉も良かった。この母にして、この子あり。
いつか、この本を翻訳して世界の人に読んでいただきたい。これが日本のSFだ。
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