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Posted by watari - 2012.10.06,Sat

『伊藤計劃記録』読了。【☆☆☆☆】


『最高に精度の高いセンサーで、現在を捉えること。』伊藤計劃氏の文筆へのスタンスが象徴されている言葉だと思います。亡くなってからまとめられた本。

 
冒頭の小説部分は、別の本で読了済み。
中盤以降は、インタビューの書き起こしと、映画評論。
 
著者については小説でしか知らなかったのですが、インタビューを読んでみると私と同世代である等身大の伊藤氏が浮かび上がってきます。言葉の使い方、時代や物事に対する見方については、ひとつ年上という同世代感を実感できます。
 
また、氏が中学時代に読んでいたという筒井康隆へのハマリ方も私と同じパターン。指輪物語やファンタジー、ソードワールド系TRPG(いまでいうところのライトノベル)に対しても同じだったかもしれません。
 
ですが、その後に読んだというSFに対するスタンスは別格。
博覧強記ぶりは、普通に読書を趣味とする人では到底たどり着かないところまでイッテしまわれています。最高に精度の高いセンサーを積んだ伊藤氏がSF世界を探索していったのでしょう。センサーを磨くのは自分自身にしか出来ないことですが、それはとても難しい。それをやり遂げて、その読み取ったデータから出力されたのが「虐殺器官」「ハーモニー」を培う原型となったのでしょう。
 
原型といえば、映画評論でもそれが垣間見えます。
2000年当時に上映されて、氏が気に入ったものを評論していますが、映画評を通じて人間論や文化論まで及んでいます。個人サイトを通じて発表されていたようですが、それはとてもレベルが高く、またネットに似合わず文章が長い。非常に好感がもてます。
 
文中には、昨今にも通じるようなことが多く書かれています。
その中でも萌えに対する評論については、私も非常に納得することができました。
 
『「萌え」る人間はどんな批評的武装をほどこしても本質的に「知的怠惰」であり、「感性痴呆」である。既に見知ったものを永遠に確認続けるファンたちによって支えられる気の狂いそうな「無限に確認作業を反復する」世界である。』
 
また映画評の中にはこんな一文もありました。
 
『設計された涙を感動とすり替えてしまう人のなんと多いことか。
それは世界に対して怠惰な証拠。涙が感動と同義ではないということ。』
 
私も既に30も半ばを過ぎ、センサーも錆び付いてきているかもしれませんが、こんな本に刺激を受けつつ、最高に精度が高くすることは難しいかもしれませんが、精度を上げて現在を捉えていきたいと思います。

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