『恐るべき旅路 -火星探査機「のぞみ」のたどった12年-』 読了。【☆☆☆☆☆】
「はやぶさ」の本を読んだり、講演を聞いていると火星探査機の「のぞみ」の経験が生きたという話が出てきます。「のぞみ」のことは殆ど知らなかったので、どういったことかと本を読んでみることにしました。ちなみにこの本、どーやら絶版の模様。今回、私は図書館で借りて読みました。
で、読んでみると「のぞみ」は、かなりのトラブルを抱えた探査機だったことがわかりました。それも「はやぶさ」も真っ青なくらいの重大で壮絶なトラブル。
なんとか火星周期の乗せようと必死の努力をしたにも関わらず、それが叶わなかったということで、相当悔しい思いをしたとのこと。
特に軌道計算を担当された川口教授に関しては、芸術的なリカバリー軌道を算出したのに、周回軌道までは回せなかったとのことで「はやぶさ」の講演でも「最後の最後で駄目になって運命は残酷であった」とその悔しさを何度も話をされていました。
重大なトラブルの要因は、ロケットの打ち上げ重量不足からの無理な軽量化だったり、予算不足からの簡略化だったり、偶然が及ぼしたものだったり、経験が足りなかったりと、凄まじい悪運を引き寄せていたのだなぁと感じました。
「はやぶさ」の幸運は、「のぞみ」の悪運からの振り子のぶり返しだったのかもしれません。もちろん「はやぶさ」の成功の一番の要因は「のぞみ」を礎とした「生き残るため」の経験の蓄積が「はやぶさ」に活きたのだと思います。
それにしても今回読んでわかったことは日本の宇宙開発は、もともと諦めの悪い組織だということがわかりました。「はやぶさ」のような不具合は初めてではなかったわけです。強い組織なんだろうなぁと思いました。
最後が決まっているノンフィクション。
トラブル連続で最後は失敗してしまう・・・という話を読んでいると、エンジニアとして感情移入して落ち込んでしまいました。成功の話は気持ち良く読めるけど、失敗の話は胸が痛む。
著者の松浦氏は先日のロケット祭りを主催(?)している方で、今回初めて読みました。実際に話を聞くより著作物はなかなかわかりやすくて良かった。これからいくつか読んでみようかと思っています。
あ、あと今月末にもういちどロケット祭りに行く予定。今回のゲストは川口教授。真面目でお堅い話ばかりでなく、くだけた話も聴けることを期待しています。
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